多くの人に読まれるCSRレポートとは?― CSR担当者の本音トーク(3/4) | 企業のサステナビリティ経営・自治体の町づくりに役立つ情報が満載

環境戦略・お役立ちサイト おしえて!アミタさん
「おしえて!アミタさん」は、未来のサステナビリティ経営・まちづくりに役立つ情報ポータルサイトです。
CSR・環境戦略の情報を情報をお届け!
  • トップページ
  • CSR・環境戦略 Q&A
  • セミナー
  • コラム
  • 担当者の声

インタビュー

株式会社大和総研 環境・CSR調査部長 河口 真理子 様 多くの人に読まれるCSRレポートとは?
― CSR担当者の本音トーク(3/4)

今回、国内でも先進的にSRIに取り組まれている企業の大和証券グループのCSR報告書制作のご担当者様に、CSRレポートの現状やSRIについて、お話を伺いました。

CSR報告書制作にも関わられ、NPO法人・社会的責任投資フォーラム代表理事・事務局長等を務めながら、専門家として環境経営・CSR・社会的責任投資に携われている、

大和総研の河口 真理子様に、CSR報告書の作り手としてのご意見と、専門家としての見解等を本音で語っていただきました。
(← 第2回の記事はこちら

「社員に自ら参加してもらうことで、CSRを理解してもらう」

蝦名:次に、こうしたSRIを世に出すために、社内外にどのように協力を得ていったのか聞かせてください。

01_2.JPG

河口様:弊社の場合は、SRIのエコファンドなどは5年以上前から運用販売していますが、最近のマイクロファイナンスボンド(保証証券)などのインパクトインベストメント型の金融商品は、商品企画部門が作ったものでした。商品の企画自体は数年間かけて練っていたようですが最初は、マイクロファイナンスなど社内理解がなかなか得られず、ネット販売用として最初は開発されたようです。

それが、社長の目に止まり、インパクトインベストメントなどのコンセプトや商品性に利興味を持っていただいたので全社的な理解を得られるようになりました。ただ、当社に限らず他社の商品企画部門の話を伺っていても、普通はなかなか一筋縄ではいかないことが多いようですね。前例のないものこういう新しいものは、最初に作った人間の思い入れと、キーパーソンの理解が、必要不可欠なのだと思います。

蝦名:CSR部門と開発部門では連携して動いているわけではないのでしょうか?

河口様:当社グループの場合、インパクトインベストメントに関してはそれぞれ勝手に動くこともありますが、イベントや情報発信などでは初期段階から協力して動くこともありますね。たとえば、こういうイベントをやるので講演者を探してほしいなど、といったコラボレーションをしながらやっています。

でも、それ以外のCSR・SRIに関する取り組みを働きかけても、反応は良かったり悪かったり様々ですね。そこで、積極的に営業協力して、ニーズのある事業会社などのお客さんのところに行ってCSRのお話をさせていただいたりすると、ついてきた営業マンも、顧客サービスの切り口に使えることがわかりますし、半分ぐらいの人は「CSRの取り組みや考え方自体が企業経営にとり重要だね」、と共感してくれますね。

そうやって理解してくれた人たち、もともと比較的SRIやCSRについて理解や関心のある人たちに狙いを定めて少しずつ協力者を増やしていっています。

03_1.JPG

「ビジネスと結びついてこそCSRの社員理解が得られる」

蝦名:私も2回ほど参加させていただきましたが、御社はCSR、SRIの観点から、「ソーシャルビジネスカレッジ」というイベントもされていて、アミタグループのトビムシもご紹介いただいておりますが、どういう経緯と目的で始められたのでしょうか?

河口様:社員にも社会問題について当事者として関心を持ってもらいたいというのもあり、「ソーシャルビジネスカレッジ」という機会を設けて、グループ社員も参加できるようにしています。

実は「ソーシャルビジネスカレッジ」というものを始める前に、「ダイワJFS・青少年サステナビリティ・カレッジ」という取り組みを4年間していました。学生さん対象に、持続可能性を考えてもらう公開講座です。ただ、持続可能性というテーマでは、すぐにビジネスに直結するイメージが無かったようで、社内の関心はなかなか得られないということがありました。そこで今回は社会的課題を事業として取り組む「ソーシャルビジネス」をテーマとしました。

やはりビジネスとしての文脈で、社会的責任や持続可能性をとらえてもらわなければ、現場で働いている社員には業務との結びつきがピンとこなかったのですね。今回は、その狙いもあたって、毎回3分の1ぐらいは社員が参加しています。

01_3.JPG

蝦名:一見、貴社の社会貢献活動のように見えて、実は社内への巻き込みやSRIのマーケット状況を社員に伝える場にもなっているということですね。確かにSRIの商品を作るにも、実際ソーシャルビジネスの事例を知らなければ、難しいですものね。また社外の実際に取り組んでらっしゃる方の言葉のほうが、説得力があるというのもわかります。

(最終回に続く)

関連情報
プロフィール
m_kawaguchi.JPG

河口 真理子 (かわぐち まりこ)
株式会社大和総研 
環境・CSR調査部長

1986年一橋大学大学院修士課程修了(環境経済)、同年大和証券入社。94年より、大和総研にて企業調査を経て、98年より、環境経営、CSR/SRIの調査研究に従事、2010年4月から1年3ヵ月、大和証券グループ本社にてCSR担当部長を経て、現在、大和総研 環境・CSR調査部長。担当分野は環境経営・CSR・社会的責任投資。

NPO法人・社会的責任投資フォーラム代表理事・事務局長。サステナビリテイ日本フォーラム評議委員、環境省・環境ビジネスウィメンの会メンバー、東京都環境審議会委員など。

(聞き手)プロフィール
img_ebina110323_prof.jpg

蝦名 裕一郎(えびな ゆういちろう)
アミタ株式会社
マーケティング事業部 マーケティングチーム

アミタ株式会社に入社後、人事部門、コンサルティング部門を経て、企業の環境教育活動のプロデュース、省庁との地域活性化支援事業の運営等に携わる。

ソーシャルビジネスに関する新規事業部門を経て、現在はCSRレポートの横断検索サイト「CSR JAPAN」の運営とCSRコミュニケーションの分析、コンサルティング業務に従事。
■ブログ: CSRが当たり前になる世の中に

このページの上部へ