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クリティカルマテリアル|欧州、米国、日本での動き 初心者向け資源循環新時代~ものづくりはどう生き抜く?

Photo_by_Grant_Durr_on_Unsplash.jpgのサムネイル画像資源問題やリサイクルを環境問題で語る時代は過去となり、世の中は資源循環を経済や社会のベースに据えようと動き出しています。日本の企業はどう立ち回ればよいのでしょうか?本コラムでは、国立研究開発法人産業技術総合研究所 畑山 博樹氏にものづくりの長期ビジョンを考えるヒントについて連載していただきます。第3回は、資源政策の重点対象として挙げられるクリティカルマテリアルについて解説します。

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Photo by Grant Durr on Unsplash

クリティカルマテリアルとは?

各国の行政機関が、資源政策の重点対象としてクリティカルマテリアルのリストを示すようになっています。第1回でお話ししたサーキュラーエコノミーにおいても、クリティカルマテリアルは優先取組分野の1つとされています。 クリティカルマテリアルとは何なのでしょうか?

近年のクリティカルマテリアルに関する議論は、2008年に米国学術研究会議(National Research Council, 以下 NRC)が発表した" Minerals, Critical Minerals, and the U.S. Economy"というレポートがきっかけでした。NRCは、資源リスクへの懸念が高まる中で、米国に重大な/致命的な(=Critical)影響を及ぼしうる金属を特定するめに、以下の図のような評価の考え方を示しました。すなわち、資源の供給リスクと、供給が制限された際の米国経済への影響度を2つの評価軸として考え、右上に位置する金属をクリティカリティが高い"クリティカルマテリアル"と判断したのです。レポートでは、銅やリチウム、白金族金属など11種の金属を対象にクリティカリティの評価をおこなっています。

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クリティカリティの考え方
(NRCのレポートに基づき筆者作成)

金属ごとの供給リスクとその影響度は、資源安全保障を考える中で昔から意識されてきたポイントです。それでもNRCの評価が注目されたのは、リスクや影響の程度を定量化し、Criticality matrixと名付けられた2軸の評価で表現することで、各金属のクリティカリティの相対関係を分かりやすく理解できたからでしょう。これ以降、欧米の政府機関や研究者が中心となって、クリティカリティ評価が数多く試みられるようになりました。

欧州、米国、日本のクリティカルマテリアル

欧州委員会は、欧州のクリティカルマテリアルを2010年から発表しています。2010年の最初のリストでは、14種がクリティカルマテリアルとして選定されました。その後も状況の変化に対応すべく2014年、2017年と評価の見直しがされており、2017年の評価では27種が選定されています。米国でも2010年以降、エネルギー省や科学技術政策局によってクリティカリティ評価が実施されました。2018年には、前年12月に発令されたクリティカルマテリアルの安定供給についての大統領令を受けて、内務省から35種のリストが発表されています。日本では2012年の資源確保戦略の中で、30種の戦略的鉱物資源が挙げられています 。前回ご紹介した通り、こちらもクリティカルマテリアルの考え方に沿って選ばれていることが分かります。なお、これらの評価では金属資源に限らず非金属資源(リンやグラファイトなど)や化石燃料(石炭など)を含めた鉱物資源全般が対象となっています。(クリティカルマテリアルは英語ではCritical raw materials、Critical materials、Critical mineralsなどと表記されます)

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欧州委員会によるクリティカリティ評価 (2017年)
(出典:European Commission, " Study on the review of the list of critical raw materials"

2017年の欧州委員会、2018年の米国内務省が示したクリティカルマテリアルと日本の戦略的鉱物資源 を比べてみると、3つのリストに共通しているのはレアメタルであるアンチモン、ガリウム、ゲルマニウム、タングステン、タンタル、バナジウム、白金族金属に加えてグラファイト、フッ素(蛍石)となっています。一方、日本のリストにのみ挙げられているのは、鉄、銅、鉛、亜鉛、ニッケル、マンガン、モリブデン、リチウムです。

レアメタルとクリティカルマテリアルの違いは?

平成の時代は、「レアメタル」が日本の資源問題を語るキーワードでしたが、クリティカルマテリアルとはどう違うのでしょうか?経済産業省の鉱業審議会は、レアメタルを「地球上の存在量が稀であるか、技術的・経済的な理由で抽出困難な金属のうち、工業需要が現に存在する(今後見込まれる)ため、安定供給の確保が政策的に重要であるもの」と定義しました。これはクリティカルマテリアルの考え方と似ており、結果としてクリティカルマテリアルのリストにはレアメタルが多く含まれることになります。一方で近年は、途上国での需要増加や資源ナショナリズムの台頭によって、地表に広く大量に存在するとみられていたベースメタルについても安定供給を意識しなければならなくなっています。ベースメタル不足が産業に及ぼす影響は非常に大きいので、たとえ供給リスクがレアメタルより小さくてもクリティカルマテリアルとなりうるのです。

また、クリティカルマテリアルは国ごとに異なります。それぞれが自国の資源供給の状況や影響度の大きい産業を反映していますから当然です。例えば日本のリストにのみ挙げられている金属からは、鉄鋼業や電池(を搭載する自動車)産業が透けて見えます。こうして各国が選定したリストですが、新しい製品の普及や資源国の政策の変化があると、実態を反映しなくなるかもしれません。ですから、欧州委員会が行っているような継続的な見直しが重要です。各国の資源戦略と深く関わるクリティカルマテリアルは、時と場所によってその中身を変えるのです。

冒頭に図で示したクリティカリティの考え方は理解しやすいものであり、様々な国がクリティカルマテリアルを検討するようになりました。ところで、それぞれの金属を図にプロットするとして、供給リスクと経済への影響度の大きさはどうやって計算されているのでしょうか?実はこの定量化の部分が、クリティカリティ評価の最大の特長であると同時に課題にもなっています。次回は、クリティカリティの評価方法についてお話しします。

参考情報

欧州委員会発表 のクリティカルマテリアル
米国内務省発表のク リティカルマテリアル

執筆者プロフィール

mr.hatayama.png畑山 博樹(はたやま ひろき)氏
国立研究開発法人産業技術総合研究所
安全科学研究部門 主任研究員

東京大学大学院工学系研究科でマテリアル工学を専攻後、現職。マテリアルフロー分析、資源リスク評価、ライフサイクルアセスメントなど、持続可能な資源利用に関する研究をおこなっている。日本LCA学会、日本鉄鋼協会所属。
発表論文等:Google Scholar, researchmap

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