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1.5℃特別報告書の内容を踏まえ、引き上げられることになったSBTの認定基準について教えてください。

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2019年2月20日、SBTの認定基準が引き上げられることが発表されました。現時点でSBTにコミットメントレターを送付していない企業、及び、送付済みではあるが社内で目標設定中の企業は、「2℃を大幅に下回る」および「1.5℃」レベルでの目標値の再検討が必要になる可能性があります。
また、すでに目標設定済の企業も、新しい基準に整合しているかどうかが可視化されるとともに、一定期間経過後に目標の引き上げを求められることになります。

本記事では、現時点でSBTから発表されている内容とともに弊社の見解を踏まえ、企業の望ましい対応を解説いたします。 

現時点でのSBTの概要についてはこちらの記事をご覧ください。

現時点で判明していること
  1. 地球温暖化を、産業革命以前の平均気温の「2℃」程度に制限しようとするレベルの目標は、2019年10月以降は認定の対象とならない。
    →「2℃を大幅に下回る」および「1.5℃」レベル(原文ではwell-below 2°C targets or 1.5°C targets)の目標設定が必要となる。具体的な新しい検証基準は2019年4月に発表され、10月に発効する予定。

  2. SBTに認定されたすべての目標は、「1.5℃」「2℃を大幅に下回る」「2℃」の3つのカテゴリに必ず分類され、2019年10月以降にSBTのWebサイトで開示される。

  3. 企業は最初の目標承認日から5年ごとに目標を見直し、必要に応じて再検証することが2025年から義務付けられる。
    →現在「2℃」レベルで目標設定済の企業は、遅くとも2025年には「2℃を大幅に下回る」および「1.5℃」レベルでの目標再設定が必須になる。

参考:SBT 「press release

認定基準引き上げの背景

この度の認定基準の引き上げは、COP24で議論された「1.5℃特別報告書」の内容が全面的に肯定されたものと思われます。すなわち、地球温暖化が人類のあらゆる活動に及ぼす悪影響は2℃レベルでも甚大であり、企業活動においてもさらなる革新が必要であるということです。

現在、全世界で500以上の企業がSBTにコミットし、そのうち約170が目標設定を終えていますが、「1.5℃」に整合した目標設定をしている企業はごくわずかです。また、パリ協定が締結されたにもかかわらず、2018年には温室効果ガスの排出量は過去最高を記録したと発表されました。

SBTは発足当初より「1.5℃」に整合した目標設定を推奨しておりました。しかしながら、現状の認定基準では、実質的に企業に対して「1.5℃」に整合した目標の設定を促すことが難しく、また排出量抑制につながる効果も低いと判断し、認定基準の引き上げと、各企業の目標レベルの開示に踏み切ったと予想されます。

また、パリ協定を受けた各国政府の目標値に対して、それらが達成されたとしても地球温暖化は2℃を上回る可能性が高いということが問題視されていました。 COP24では、国ごとの目標に対しても、今後より高い目標設定が望ましいということが示唆されており、この度の認定基準の引き上げは、企業だけでなく各国の責任ある対応にもつなげたい思惑があると予想されます。

今後企業が取るべき対応

「1.5℃特別報告書」によれば、「1.5℃」に整合した目標とは、二酸化炭素排出量を2030年度時点で約45%の削減(2010年度比)だと示されています。

現在「2℃」に整合した目標を設定、または検討している企業では、Scope1,2の目標数値を2030年度時点で基準年度比「30%前後の削減」としている例が多いですが、このレベルでは2019年10月以降は認定が不可能となる可能性が高く、「2℃を大幅に下回る」および「1.5℃」に整合した目標設定が求められるようになります。また、Scope3の認定基準である「野心的」の判断基準も同様に見直されるものと思われます。

※なお、目標引き上げ後においても「1.5℃」レベルは十分に野心的であり、最低限必要なレベルは「2℃を大幅に下回る」になると思われます。新しい検証基準は今年4月に発表され、10月に発効される予定です。

  • 目標策定中の企業が取るべき対応
    (現時点でSBTにコミットメントレターを送付していない企業、及び、送付済みではあるが社内で目標設定中の企業)
    現在「2℃」レベルで目標設定している場合は、2019年10月までに申請すれば認定の可能性はあります。しかしながら、2025年には必ず見直さなければならなくなるため、あらかじめ「2℃を大幅に下回る」「1.5℃」レベルの目標を再設定した上で申し込むことが望ましいでしょう。

  • 目標設定済の企業が取るべき対応
    現在は、最新の科学的知見や外部環境の変化を反映した目標値の見直しは「定期的に行うことが推奨される」という表現になっていますが、2025年からは必須になります。つまり、現在「2℃」レベルで目標設定している場合、2025年までには「2℃を大幅に下回る」「1.5℃」レベルでの目標再設定が必要になります。

    また、2019年10月にはSBTに認定されたすべての目標は、「1.5℃」「2℃を大幅に下回る」「2℃」の3つのカテゴリに必ず分類され、SBTのWebサイトで開示されるようになりますので、他社との差別化という観点からは、なるべく早期に「2℃を大幅に下回る」「1.5℃」レベルでの目標再設定が望ましいでしょう。
参考情報

sbt公式サイト:The imperative for raising ambition
Science Based Targets initiative announces major updates following IPCC Special Report on 1.5°C

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アミタでは、ビジョン策定・戦略立案支援によって企業のサステナビリティ経営をサポートするコンサルティングサービス「ドラマ&ストラテジーサービス」の提供を通じ、数多くの企業に対してSBTに整合したGHG削減の長期目標策定の支援を行っております。

執筆者プロフィール

amita_nakamura.jpg中村 圭一 (なかむら けいいち)
アミタ株式会社
環境戦略デザイングループ 環境戦略デザインチーム

静岡大学教育学部を卒業後、アミタに合流しセミナーや情報サービスの企画運営、研修ツールの商品開発、広報・マーケティング、再資源化製品の分析や製造、営業とアミタのサービスの上流から下流までを幅広く手掛ける。現在は分析力と企画力を生かし、サステナビリティを経営に統合するためのビジョン・戦略策定や業務効率化などに取り組んでいる。

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