インタビュー
延長戦かゲームチェンジか? 経済学者と語る、資本主義社会の未来予想図(前編)
今回、当社代表取締役会長の熊野英介が対談したのは「ゲーム理論」や「マーケットデザイン」を専門とする、経済学者の安田洋祐氏。
資本主義や民主主義など、戦後日本を支えてきた社会システムのほころびが露わになる昨今。前代未聞のAI革命が起きるなか、日本はどう対応すべきなのか――?安田氏の経済学的知見と鋭い市場洞察に、熊野が持つ哲学的かつ事業家としての視点がクロスすることで、大局から時代の潮目を読む貴重な対談となりました。
(対談日:2025年7月7日)
連続対談企画「道心の中に衣食あり」では、アミタ熊野が対話を通じて持続可能な社会の未来図や、その設計に必要な思考や哲学をお伝えしています。
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私たちは数字の概念を見つけて、世界を広げている
熊野:環境問題の深刻化、国際秩序の動揺、そしてAIなどによる技術の激変。これらが重なり合う今は、まさに"歴史の転換点"だと感じています。この流れの中で、大きなゲームチェンジが起きるのか、それともこれまでの延長戦が続くのか。安田先生のご著書『日本の未来、本当に大丈夫なんですか会議』のタイトル通り、経済学の視点から忌憚ないご意見をいただきたいです。
安田氏:はい、本日は楽しみにしてきました。よろしくお願いします。
熊野:まずは安田先生の専門分野である「ゲーム理論」について。これはどのような学問ですか?
安田氏:経済学には、ミクロ経済学、マクロ経済学、そして統計的な要素を持つ計量経済学の3本柱があります。ゲーム理論はこの3つの中で言うと、ミクロ経済学で主に使われる数理的なツールにあたります。小難しい解説を加えると、複数の主体をプレイヤーとみなし、互いに与える影響を考慮しながらその意思決定や行動を分析する学問です。
戦略的な駆け引きを扱うゲーム理論の面白さに大学3年生のときにハマってしまって、気がついたら海外留学までして博士号を取り、研究者になっていました。
熊野:経済学は日本では文系科目ですが、ゲーム理論は関係性に依存する不確実な要素に加えて、すごく数学的な側面も持っていますよね。安田先生は昔、数学では代数学と幾何学のどちらがお好きだったんですか。
安田氏:僕は断然、幾何学ですね。図形の問題が大好きでした。
熊野:最初に仮説を立てて論理で詰めていく代数学に対して、幾何学は全体を俯瞰して補助線を引くなど「あ、そういう解き方があったのか!」という発見があるので、ワクワクドキドキしますよね。
安田氏:おっしゃる通りですね。代数の問題は、変数をxに置き換えて数式を立てるなど学校で学ぶ「テクニック」が重視されますが、図形の問題は「ひらめき」が求められます。どちらも大切ですが、個人的には方法論より感性が試される図形の問題が大好きでした。ゲーム理論もパズル的な要素がかなりあって、幾何学の問題と同じく発想力が必要です。
熊野:冒頭から脱線しますが(笑)、図形の話から連想して、1ついいですか。
中世まで、数学や美術における空間理解は、基本的に「平面の上でいかに現実的に見せるか」という姿勢に基づいていて、画家たちは限られた2次元のキャンバスに、あたかも3次元のような奥行きや立体感を演出してきました。その典型例がレオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』です。この絵は、遠近法を用いて空間の奥行きが描かれていますが、実際の配置に置き換えようとすると、登場人物やテーブルのサイズなどにおいて、リアルな写実とは矛盾が生じます。そこには「虚(錯覚)」を「真(現実)」のように見せることで精神的中心としてのキリストを際立たせるという芸術上の工夫が存在したわけです。
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レオナルド・ダ・ヴィンチ 『最後の晩餐』(1495年-1498年)
熊野:ところが近代に入ると、空間の捉え方そのものが変化していきます。ルネサンス以来の遠近法は、2次元の平面上に3次元空間を仮想投影する仕組みでしたが、19世紀の非ユークリッド幾何学の発展によって、空間は必ずしもユークリッド幾何学的ではない、例えば、それまで交わることは決してないとされていた平行線が交わる場合もあると理解されるようになりました。これにより、従来の「仮想的に3次元を描く」という発想から、空間そのものの構造を問い直す方向へとシフトしていったのです・・・
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対談者プロフィール
安田 洋祐(やすだ ようすけ)氏
政策研究大学院大学 教授
熊野 英介(くまの えいすけ)
アミタホールディングス株式会社
代表取締役会長 兼 CVO
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