
■一連の記事
廃棄物委託契約の基礎知識をおさらい|処理委託契約書について学ぶ(その1)
JISC0950号に規定する含有マークとは?~わかりにくい記載項目の代表例~|処理委託契約書について学ぶ(その2)
処理委託契約に違反があると廃棄物処理法違反になる?|処理委託契約書について学ぶ(その3)
第1回、第2回と、処理委託契約書について解説しましたが、ここで皆さんに質問です。 「契約違反は法律違反になる?」でしょうか。
「廃棄物処理法では産業廃棄物の処理委託には契約書が義務づけられています。では、その契約書に書いてある通りにしないときは、即、廃棄物処理法違反となってしまうのか?」といったご質問をいただくことがあります。
※本記事は、2011年に執筆した記事を加筆・修正しています。
契約事項と法律は別物
結論からいうと「契約事項と法律は別物」ということになります。分かりやすい例で説明してみます。
契約書の法定項目に「受託者支払金額」がありますが、これが次のような場合、
- 受託者支払い金額:15,000円/トン
- 実際の取扱量:20.1トン
この場合、料金は301,500円となりますが、このときに「1,500円はおまけして、300,000円でいいです」と委託先に言われたらどうしますか。「いや、契約書では301,500円だから、もらってくれないと困る」と頑張る方は、まずいないですよね。
次に「産業廃棄物の量」も契約書の記載事項として規定されていますが、これも、
- 契約書上:年間1,000トン
- 実際の排出量:850トン
といった場合に「なんとしても、あと150トン出してください」と言われても困りますね。この場合は、契約内容によっては損失補填として支払いが発生することはあり得るかもしれませんが、それはあくまで当事者間の調整や民事の話になります。
このように、契約事項どおりにやらなかったからといって、すぐに廃棄物処理法違反というわけではないことは、ご理解いただけると思います。廃棄物処理法では、あくまでも「委託契約書には次に掲げる事項についての条項が含まれていること」と規定されています。したがって、規定された条項さえ記載されていれば、廃棄物処理法に定める委託基準を遵守している、と考えられるわけです。
ただし、これはどんな契約でも言えますが、公序良俗に反する契約や、契約の当事者甲乙ともに「虚偽」「実行不可能」と分かっている内容の契約は無効となります。廃棄物処理に関する契約であっても、この基本は同じです。
委託契約書以外の条文で規定されていることにも注意
では、契約書に書いてある事項は守らなくてもよいのかというと、もちろんそうではありません。当然のことながら、他の契約と同様に契約は当事者間でのルールですから、もし、それが原因で損害等を生じれば、債務不履行として、損害賠償等を求められるケースもあるでしょう。
また、契約事項以外の条文で担保している項目も数多くあり、それを守らなければ、そちらの条項で法律違反となってしまう内容もあります。
例えば「産業廃棄物の種類」では、許可を有していない産業廃棄物を委託したら無許可委託となり、受託者はまさに「無許可」そのものになってしまいます。「がれき類の許可しか持っていない業者に、廃プラスチック類を委託する」といった状態です。
このように「産業廃棄物の種類」や「運搬の最終目的所在地」等の項目については、前述の「量」「料金」と違い「程度問題」ということはありえません。「がれき類」の契約書で「廃プラスチック類」を委託したり、「A地点まで運搬すること」の契約書で「B地点に運搬させる」行為は、「有効な契約が締結されていない」と判断される可能性が高いでしょう。
実務上も、「契約書には書いてあるが許可の範囲外」「契約書の運搬先と実際の運搬先が異なる」といったケースは、法令違反の指摘や行政処分につながりやすいポイントです。
契約解除時の未処理産業廃棄物の扱い
こういった意味で、典型的に判断に迷う事例は「契約解除時の未処理産業廃棄物の扱い」ではないでしょうか。まずはその条項を見てみましょう。
(委託契約に含まれるべき事項)
施行規則第八条の四の二
令第六条の二第四号 へ(令第六条の十二第四号の規定によりその例によることとされる場合を含む。)の環境省令で定める事項は、次のとおりとする。
(一~八略)
九 委託契約を解除した場合の処理されない産業廃棄物の取扱いに関する事項
皆様の会社では「受託処理業者が処分する」としているのではないでしょうか。
中途半端な状態で契約解除になってしまうのは、処理業者が倒産してしまった、行政処分を受けてしまった、処理しきれないほど産廃をため込んでしまった、といった場合が考えられます。
契約書に「委託した後は処理業者が処分する」と規定していたとしても、その相手方が消滅していたり、資金がない状態に陥っていたら、なんの役にも立ちません。
「委託契約書には処理業者が処分すると書いているじゃないか」と何もしないでいれば、最悪、措置命令が排出事業者にもかけられることになるかもしれません。近年は、長期保管や不適正保管に対する行政の目もより厳しくなっており、「契約にそう書いてあるから安心」という考えは通用しづらくなっています。
結局、あとから損害賠償を求めることはできるかもしれませんが、廃棄物処理法に規定する契約書といえども、契約違反は民事上の問題であり、民事上の責務が排出者側にないように規定していたところで、廃棄物処理法で規定される排出事業者の責務を逃れられるものではないと考えられます。
この記事を読まれた皆さんは、ぜひ、もう一度「産業廃棄物委託契約書」を読み直して、実効性のある内容にしておくことも必要かと思います。条文上の必須項目を満たすだけでなく、「倒産・行政処分・契約解除時」にどう動くかまで含めて、契約条項と社内体制をセットで見直しておきたいところです。
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執筆者プロフィール(記事執筆時点)

ながおか ふみあき
長岡 文明
BUN環境課題研修事務所 主宰
山形県にて廃棄物処理法、廃棄物行政、処理業者への指導に長年携わり、行政内での研修講師も勤める。2009年3月末で山形県を早期退職し、廃棄物処理法の啓蒙活動を行う。廃棄物行政の世界ではBUNさんの愛称で親しまれ、著書多数。
元・文化環境部循環型社会推進課課長補佐(廃棄物対策担当)
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