災害廃棄物関連の処理法改正まとめ -なぜ何度も法改正されるのか-

災害廃棄物関連の処理法改正まとめ -なぜ何度も法改正されるのか-

今回(令和8年)の廃棄物処理法改正の内容は「ヤード対応」と「災害廃棄物関連」と言われています。災害廃棄物というと、どうしても自治体が承知していればいいのでは、となりがちですが、当然のことながら災害は一般国民や普通の事業者にも密接に関わってくることです。
今回は、令和8年の改正事項ということだけではなく、廃棄物処理法における災害廃棄物の全体像を見てみましょう。

参考記事:スクラップヤード規制をどう読むか|各法制度が扱う「物」と「行為」の再整理

BUNさん流で見る 災害廃棄物はなぜ何度も法改正されるのか

【近年の災害廃棄物関連制度の主な改正経緯】
平成23年(2011年)
●東日本大震災発生
・広域処理や仮設処理施設の活用など、多くの制度的課題が顕在化
平成27年(2015年)
●廃棄物処理法・災害対策基本法改正
・災害廃棄物処理の基本原則を法定化
・国、自治体、民間事業者の連携・協力を明確化
・一般廃棄物処理施設の設置特例(第9条の3の2、第9条の3の3)
・産業廃棄物処理施設活用特例(第15条の2の5第2項)
・大規模災害時の環境大臣による処理代行制度を整備
令和2年(2020年)
●省令改正
・非常災害時における施設設置特例等の運用を見直し
・災害廃棄物処理に係る特例制度を拡充
令和8年(2026年)
●廃棄物処理法改正
・民間設置施設の活用をさらに推進
・平時から災害対応施設を位置づけやすくする制度を整備
・災害発生時の迅速な処理体制を強化

災害廃棄物の制度は、廃棄物処理法の中でもとくにわかりにくい分野です。
その一因として、私は、災害廃棄物が法律の上ではまず一般廃棄物として整理される点が大きいと思っています。災害廃棄物は、事業活動に伴って出るものではありません。そのため廃棄物処理法の定義上、一般廃棄物となってしまうのです。

災害で出る廃棄物は、壊れた家財、畳、木くず、がれき、土砂まじりの混合物など、平常時のごみとはまるで違います。量も性状も極端です。ここに最初のねじれがあります。見た目は非常時の特殊な廃棄物なのに、法的な入口は平常時の一般廃棄物行政だということです。

昔は超法規で片づけるしかなかった

昔から今のような法制度が整っていたわけではありません。

江戸時代はもちろん、昭和の時代でも、災害廃棄物はとにかく現場で片づけるという発想が強く、実際には現場への埋め戻しのような対応が多く行われてきました。昔の洪水や地震の後には、家屋の残がいなどがそのまま埋め戻されている箇所が数多くあります。

しかし、今の廃棄物処理法の規定に照らせば、そのような対応は簡単に正当化できません。
内容によっては、不法投棄や無許可埋立てに近い評価を受けかねません。昔はルールそのものが無い時代でしたから「法令違反」と言うわけではありませんでした。しかし、法律が整備されてくると、法治国家である限りいつまでも「超法規対応」と言うわけにもいきません。法制度としては後から追いかけてきたのが「災害廃棄物」なのです。

市町村だけでは抱えきれない、災害廃棄物処理

一般廃棄物の処理は、市町村の自治事務です。そのため、災害廃棄物も出発点では市町村が担うことになります。

ただ、前述のとおり、災害廃棄物は、平常時の一般廃棄物と比べて、量も質もまったく違います。環境省も、巨大地震や豪雨に備えた資料(基本方針やガイドライン等)の中で、平時の廃棄物処理体制では対処できない規模の災害を前提に、特例制度を整理しています。

つまり、責任の中心は市町村のままなのに、処理の実態は市町村単独では抱えきれないのです。
だからこそ、国や都道府県の関与だけでなく、民間施設の活用が重要になります。

第15条の2の5が担ってきた役割

この点で重要なのが、廃棄物処理法第15条の2の5です。
この規定は、もともと産業廃棄物処理施設の設置者が、その施設で処理するものと同様の性状をもつ一般廃棄物を処理する場面を想定した特例です。平成27年改正では、非常災害時には、この特例による届出を事後届出で足りるようにして、既存の産業廃棄物処理施設を迅速に使いやすくしました。

この規定における発想ははっきりしています。
新しい施設を一から作るのではなく、すでにある産廃施設を使って災害廃棄物を早く処理するということです。

ただし、この特例にも限界があります。
第15条の2の5は、あくまで既存の産業廃棄物処理施設を活用する特例です。つまり、既存施設があり、その施設で処理するものと同様の性状の災害廃棄物であることが前提になります。したがって、災害の現場で必要となるすべての処理に、この条文だけで対応できるわけではありません。

また、処理施設設置許可制度の規定も足かせになっています。
というのは、産業廃棄物処理施設(要許可)は法律第15条を受けた政令第7条により「汚泥の脱水施設」や「廃プラスチック類の破砕施設」等、19種類の処理施設に限定しているのです。そのため、災害で発生してくる「畳の破砕施設」などは設置許可の対象にならず、この制度が活用できないのです。産業廃棄物処理施設として設置許可を取っていないので、事後届出が活用出来ない、となるのです。

第9条の3の3の登場

そこで今回あらためて注目したいのが、第9条の3の3です。

この規定は、市町村から非常災害により生じた廃棄物の処分の委託を受けた者が、都道府県知事への届出によって、一般廃棄物処理施設を設置できるという特例です。環境省の整理でも、第9条の3の3は災害時の一般廃棄物処理施設設置の特例として、第9条の3の2や第15条の2の5第2項と並ぶ制度として位置付けられています。

この規定の意味は大きいです。
第15条の2の5が既存の産廃施設を借りる発想だとすれば、第9条の3の3は、市町村から委託を受けた民間事業者が、災害廃棄物処理のための一般廃棄物処理施設を動かす発想です。

つまり、民間施設の活用といっても、2つの方向があります。

条文主な場面ポイント
第15条の2の5既存産廃施設の活用同様性状の一廃処理
第9条の3の3委託先による施設設置災害処理の受託対応

既存施設がそのまま使えるなら第15条の2の5が有力です。けれども、それだけでは足りず、委託先が処理体制そのものを組まなければならない場面では、第9条の3の3のような仕組みが必要となったわけです。

なぜ今回(令和8年)も改正が必要だったのか

では、ここまで制度を整えてきたのに、なぜ今回も改正が必要だったのでしょうか。
私の観点では次の4点があるかなぁと感じています。

  1. 平時に備えを呼びかけても、十分に動けない市町村があること。やる気の問題というより、人手も時間も足りないのです。
  2. 発災前と発災直後では、求められる対応が違うこと。平時は慎重な手続が重視されますが、発災直後はスピードが優先されます。この切替えが制度上むずかしいのです。
  3. 平常時の施設設置手続が重いこと。環境保全のために厳格なのは当然ですが、災害対応ではその重さが障害になる場面があります。
  4. 一般廃棄物処理施設と産業廃棄物処理施設で、設置許可が必要な施設の種類がそろっていないこと。そのため、既存の民間施設を災害時にそのまま使おうとしても、条文のつなぎだけではうまく回らないことがあります。

要するに、今回の改正の狙いはただ特例を増やすだけではなく、民間設置の処理施設を、平時から災害対応の資源として位置付け、見える化し、いざという時は動かしやすくすることにあります。つまり、これからは公設施設だけで考えるのではなく、民間施設を「平時から」災害対応資源として組み込む発想がより重要になります。

その際のポイントは、手続の簡略化です。
従来どおりの重い手続のままでは、いざという時に間に合いません。そこで、災害時に使うことを前提にした位置付けや、届出や許可の流れを簡素にする仕組みが重視されます。環境省の近年の資料でも、平時からの計画策定、協定の締結、民間事業者との連携、特例制度の活用促進が一体で検討されてきたことが示されています。

▼災害廃棄物の処理の推進(令和8年改正)

災害廃棄物の処理の推進

出典:環境省

まとめ

災害廃棄物制度のわかりにくさは、条文が多いからだけではありません。一般廃棄物という法的整理と、災害時には民間施設まで含めて総動員しなければならない現実との間に、常にずれがあるからです。

第15条の2の5は、既存の産廃施設を使うための重要な特例です。
一方で、第9条の3の3は、市町村の委託を受けた民間事業者が、災害廃棄物処理のために施設を設置して動く道を開く規定です。

この二つを並べて見ると、今回の制度の方向性がよくわかります。
つまり、これからの災害廃棄物対策は、市町村だけで抱え込まず、民間施設をどう平時から組み込むかが重要であり、今回の改正は、その現実を法律の側から少しずつ追いかけたものだと言えそうです。

執筆者著書のご案内

廃棄物処理の基礎から実務まで

廃棄物処理の基礎から実務まで

著:長岡 文明  発行:(一社)産業環境管理協会

廃棄物担当者のために書き下ろした一冊! 廃棄物処理法の基礎から実務に必要な知識までを凝縮。気になる各種リサイクル法の解説も掲載。

執筆者プロフィール(記事執筆時点)

ながおか ふみあき

長岡 文明

BUN環境課題研修事務所 主宰

山形県にて廃棄物処理法、廃棄物行政、処理業者への指導に長年携わり、行政内での研修講師も勤める。2009年3月末で山形県を早期退職し、廃棄物処理法の啓蒙活動を行う。廃棄物行政の世界ではBUNさんの愛称で親しまれ、著書多数。
元・文化環境部循環型社会推進課課長補佐(廃棄物対策担当)

ESG経営に関する情報を
お探しの方必見

お役立ち資料・セミナー
アーカイブ一覧

  • なぜESG経営への移行が求められているの?
  • サーキュラーエコノミーの成功事例が知りたい
  • 脱炭素移行における戦略策定時のポイントは?
  • アミタのサービスを詳しく知りたい

そのような
お悩みありませんか?

アミタでは、上記のようなお悩みを解決するダウンロード資料やセミナー動画をご用意しております。
是非、ご覧ください。