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コラム

LM3(Local Multiplier3)|測定によって見える地域への経済的貢献 初心者向け人・もの・カネ・気もちが巡る「地域分散シナリオ」

Somerightsreservedbyneco.jpg現在の日本において、過疎と過密は進行し、一部の都市部では社会増による人口増加が、農村部では自然減と社会減の両面から人口減少がみられます。この様子は「消滅可能性都市」という言葉で注目を浴びました。日本経済はバブル時代までのような右肩上がりは望めず、少子高齢化で増える社会保障費と減る税収。日本全体の税収の一部を地域にまわすしくみも崩壊寸前です。そんな中、今後注目されるのが地域内での経済循環を高めるしくみです。

そこで本コラムでは、幸せ経済社会研究所の新津尚子氏に、持続可能社会の鍵をにぎる「地域分散シナリオ」について、参考事例などを交えて連載していただきます。第4回は、地域への経済的貢献を測る手法、LM3をご紹介します。

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地域への経済的貢献を測る手法LM3とは?

前回は自治体がモノやサービスを購入(調達)する際に、地元に貢献している事業者を優先することで、地元の産業を活性化する取り組みを紹介しました。こうした取り組みの効果を最大化するために重要なのは、効果を測定することです。測定すれば、「地元の事業者AとBでは、どちらが地元への貢献度が高いのか」を可視化できるからです。後ほど紹介する事例にもあるように、「地域外からお金をたくさん稼ぐ事業者は、地元経済への貢献度が大きい」と考えがちですが、実はそうとも言い切れません。
測定結果は調達の基準として利用できるほか、企業の地域貢献度をアピールするツールとしても使用できます。今回は、測定方法であるLM3に注目し、その方法と考え方を紹介します。

LM3とはLocal Multiplier 3の略で、日本語に直訳すると「地域内乗数3」です。乗数とは経済学で使われる言葉で、この場合だとお金が循環を重ねる度に、全体としての金額が数倍に増えることを意味します。ここでは地域内のお金の循環に限定しているので「地域内乗数」です。最後の「3」という数字は、LM3ではお金の行き先を3巡目まで追うことを表しています。なぜ3巡目までかというと、3巡目までで地域内で循環する金額のかなりの割合を網羅できるからです。。

LM3の測定方法

事業者や組織のLM3を測定する方法を、簡単に説明します。
1巡目では、事業者のある年の収入を調べます(ここでは仮に100万円の年間収入があったとします)。
2巡目では、「事業者の収入のうち、いくらが地域内で使われたか」を調べます。具体的に調べる点は2つ。1つは事業者が支払った賃金のうち、地元の従業員に支払われている金額です。2つ目は、事業者が購入しているモノやサービスのうち、地元内から購入している金額です。ここでは40万円が地域内で使われたと仮定します。
3巡目では、地元の従業員と取引事業者が、さらに地元で使用する金額を調べます。具体的には、「地元で暮らす従業員は、給与のうち、どのくらいを地元で使ったのか」と「地元の取引事業者は、受け取った金額のうち、どのくらいを地元での支払いに使ったのか」を追っていきます。ここでは合計10万円が地域内で使用されたとします。2巡目までは基本的には事業所の記録を用いて確認できますが、3巡目ではアンケート調査などを行う必要があり、2巡目までと比較すると調査に手間がかかります。ただし、従業員や取引事業者にどのくらい地元で買い物をしているかを尋ねることで、地元経済に関する問題意識を持ってもらえるという効果もあります。

LM3の計算式

ここまでくれば、LM3の計算は簡単です。LM3の計算式は「1巡目から3巡目までの合計額÷1巡目の収入」です。この例でいえば、「(100万円+40万円+10万円)÷100万円」、つまり、1.5がLM3の値です。この「1.5」という数字は、「この事業者が収入を1円得ると、地域経済には1.5円分の価値を生み出す」ことを示し、値が大きいほど地域への経済的な貢献度が高くなります。

事例:ホテルと民宿、地元経済への貢献度の違いは?

LM3の考え方の重要性を示す事例として、英国のテイサイド地方の複数のホテルとB&B(Bed & Breakfast、朝食付きの民宿)の貢献度の差を紹介しましょう。

1巡目(テイサイドの宿泊施設が観光客から受け取った金額)は、ホテルは17万ポンド(約2,400万円)、B&Bは10万ポンド(約1,400万円)でした。1巡目ではホテルのほうが7万ポンド(約1,000万円)も多くの金額を観光客から得ています。図1の青い部分が1巡目の結果を指していますが、普通はこの金額だけで、「ホテルの方が地元経済に貢献している」と判断されます。でも、お金の流れを追跡していくと異なる結果が見えてきます。

お金の流れの「2巡目」では、ホテルとB&Bが「観光客から受け取ったお金のうち、どれくらいを地域内で使ったのか」を追跡します。具体的には、宿泊施設が、従業員のうち地元で暮らしている人への賃金と地域内の取引事業者(食料品の購入やクリーニングなど)に支払っている金額を調べます。テイサイドでは、ホテルが売上の20%を地域内で使っているのに対して、B&Bではその割合は80%でした。つまり、ホテルは観光客から受け取った17万ポンドのうち3万4,000ポンドしか地元で使っていないのに対して、B&Bでは10万ポンドのうちの8万ポンドを地元の従業員や取引事業者に支払ったということです。

図1の1巡目(青色)と2巡目(オレンジ)を合計した金額をみると、B&Bの合計額がホテルに迫っていることがわかります。
table001_0613.pngここでは3巡目は、地元の従業員や、地元の取引事業者が売上のうち50%を地域内で使っていると仮定します。すると、ホテルの従業員と取引事業者は、地域内で1万7,000ポンド使っているのに対して、B&Bは4万ポンド使っていることになります。

3巡目までを合計した結果を表したものが、図1のグラフ全体です。3巡目では、ホテル(22万1,000ポンド)とB&B(22万ポンド)の金額がほぼ並びます。1巡目では日本円にすると1,000万円くらいあった差が、3巡目では14万円まで縮まる計算です。

理論的には、3巡目以降もこの流れはずっと続きます(図2)。この事例では最初の6回分の額を合計すると、B&Bはその収入を地域内で25万5,000ポンドまで増やすのに対して、ホテルは23万5,875ポンドです。「うさぎとかめ」のお話のように、B&Bはスタートでは出遅れていても最終的には地元経済に大きく寄与するのに対し、ホテルは1巡目では大きくリードしているものの、巡を追うごとに勢いを失っています。
table002_0613.png

お金の流れを追跡する

この例から分かることは、事業者の地域への経済的な貢献度は、お金の流れを追っていかなければ分からない、ということです。

LM3の計算方法やテイサイド地方のホテルとB&Bの事例は、この連載をお読みの皆様にはおなじみの「漏れバケツ理論」を提唱しているNew Economic Foundationが2002年に刊行した『お金の追跡(The Money Trail)』というガイドブックに掲載されています。

地元外の事業者でも、地元への貢献度が高いことも

『お金の追跡』には、市内の建設会社のLM3が1.11だったのに対し、市外の建設会社のLM3が1.17だったという意外な事例が紹介されています。理由を調べると、「市内」の事業者は、全国展開している建設会社の支部だったのに対し、「市外」の事業者は、地理的にこの地域に近く、多くの従業員が市内に通勤していることがわかりました。この例からも分かるように、LM3の長所は、お金の流れを追っていくことで、当初の売上や、事業者の所在地だけからはわからない地域への経済貢献度を測定できることです。また、地元への貢献度の高さが数字を見ればひと目でわかることも魅力です。

今回紹介したLM3は経済的な地域貢献度の測定方法です。他にも様々な測定方法があるので、目的に適した測定方法を選ぶことも大切です。

関連情報
執筆者プロフィール

niitsu-san77.jpg新津 尚子(にいつ なおこ)氏
幸せ経済社会研究所 研究員

武蔵野大学ほか非常勤講師。東洋大学大学院社会学研究科社会学専攻 博士後期課程修了〔博士(社会学)〕。幸せ経済社会研究所では、「世界・日本の幸せニュース」の編集や、社会調査(アンケート調査)などを主に担当している。
幸せ経済社会研究所 https://www.ishes.org/

■主な共著・寄稿文
『社会がみえる社会学』(2015年/北樹出版)
「幸福で持続可能な地域づくりとSDGsー海士町の取り組みを事例に」『月刊ガバナンス2月号』(2019年/ぎょうせい)

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