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コラム

サーキュラーエコノミーの国際規格 「ISO 59000」 シリーズとは?世界最古の国家規格協会、英国規格協会(BSI)の考えるサステナビリティ認証・ラベルの「使い方」

持続可能な社会の実現のため、欠かせない要素の1つである循環経済(サーキュラーエコノミー)。
国際認証機関であるBSIグループジャパン連携コラム3回目は、今後発行予定の循環経済に関する国際認証「ISO 59000シリーズ」について、最新情報を解説します。

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目次

2024年7月4日(木)に、ハーチ株式会社と「サーキュラーデザインとは何か」またそれをどのようにビジネスに取り込むのかについてセミナーを実施します。さらセミナーの中では、ハーチ×アミタにて共同開発した、サーキュラーデザインをビジネスに取り込むためのワークショッププログラムの概要もご紹介いたします。

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はじめに

循環経済(サーキュラーエコノミー) というと、皆さんはどのようなことを思い浮かべるでしょうか。
私は「循環」と聞くと、数十年前にあるアウトドア衣料メーカーが使用済みペットボトルを繊維として再生し、その糸からフリースを作ったことを思い浮かべました。また、これは卑近な例ですが、私の友人が20年以上も前の車(4WDの軽自動車)を修理して未だに乗り続けていることも、広い意味では循環経済の一環として考えられるかも知れません。
サーキュラーエコノミーという言葉は、現在では広く使われるようになっていますが、その定義や基準はあいまいなままでした。いま、そのような概念がISO化され、ある程度の枠組みが与えられようとしているのを皆さまご存じでしょうか。それが、循環経済の実現を目指す国際規格ISO 59000シリーズです。

ISO 59000シリーズとは

ISO 59000シリーズは「循環経済(サーキュラーエコノミー)」の実現を目指す国際規格で、環境マネジメントに関するISO 14000シリーズとも関連の深い規格です。
シリーズのテーマである循環経済は、大量生産・大量消費・大量廃棄を前提とした経済から、製品再利用の促進や、製品寿命を長くすることで経済システムを再構築しよう、という持続可能な発展への移行を目指す概念です。これまでの消費型の経済を線形経済(リニアエコノミー)と呼び、その対比として循環経済(サーキュラーエコノミー)が位置づけられます。

関連記事:サーキュラーエコノミーとは? 3Rとの違い、3原則や5つのビジネスモデル、取り組み事例まで解説!

ISO 59000シリーズは、フランスの提唱によって開発が始まり「持続可能な開発への貢献を最大化するため、関連するあらゆる組織の活動の実施に対する枠組み、指針、支援ツール及び要求事項を開発するための循環型経済の分野の標準化」を目指しています。ISO規格の策定の際には、関連する専門知識を持ったメンバーが集まり、専門委員会を構成して規格の開発を進めていきますが、この委員会をTC(Technical committee)と呼んでいます。ISO 59000シリーズの開発においてはTC323がその役割を担っていますが、本委員会の下5つのGW(ワーキンググループ)に分かれ、現在は循環経済に関する下記の6つの規格が開発されています。

▼循環経済に関する6つの規格

ISO 59004

循環経済-用語、原則、実施のためのガイダンス

ISO 59010

循環経済-ビジネスモデルと価値ネットワークの移行に関する
ガイダンス

ISO 59020

循環経済-循環性能の測定と評価

ISO/CD TR 59031

循環経済-パフォーマンスがベースとなるアプローチの事例

ISO/TR 59032

循環経済-サーキュラーエコノミー導入・実装に関する既存の
ビジネスモデルの事例

ISO 59040

循環経済-製品のCEの側面に関する情報を報告し情報交換するための方法論とフォーマット

出典:BSI作成

今後これらの規格が国際規格として採用されることにより、各国での影響力が増し、循環経済への移行に関するガイドラインや評価方法の拠り所としての役割が期待されます。

関連記事:ISO「TC323」サーキュラーエコノミーの国際標準化トレンドを押さえる
※2023年12月時点の情報です

なお、英国規格協会では、このISO 59000シリーズに先駆けて2017年にBS 8001(「サーキュラーエコノミーの原則ガイダンス:取引と実践のためのフレームワーク」)を発行しています。BS 8001では用語や概念、循環経済の原則を組織に落としこむ際の具体的なガイダンスが1冊の規格にまとめられているのに対し、ISO 59000シリーズは循環経済への移行方法に加え、測定や評価方法等を規定しています。

ISO 59000シリーズ開発の背景と目的

工業化や人口増加による環境負荷が高まり、地球規模での気候変動が問題視されている中「あらゆる資源は有限である」という前提で、経済活動も進めていかなければなりません。

皆さまは「リファービッシュ」という言葉をご存じでしょうか。これは、不良品や中古製品等を整備し、新品に準じた状態に仕上げるビジネスモデルのことを指します。日本国内でも、先日大手家電メーカーが高級家電の再生品を通信販売で取り扱うことがニュースになっていましたが、それらもリファービッシュの例として挙げられます。また、欧州では今年2月に消費者の新たな権利「修理する権利」を導入する指令案が、暫定的な政治合意に達したと報じられました。製品が故障した際に、その購入者が製品の修理をすることよりも、新たな製品に買い替えすることが多いという現状を改めるために作られており、メーカー等に対して、法定保証の対象か否かにかかわらず、一定の条件での修理対応や、消費者の修理サービスへのアクセスを容易にすること、修理事業者への部品や必要情報の提供などを義務付ける内容です。
これらの動きは循環経済の実現に向けたものとして捉えることができます。

産業化や人口増加の影響によって地球環境への負荷がますます高まっている昨今、世界各国で、資源の再利用の促進やライフサイクル (製品寿命) の延長が今後制度化・義務化することが予想されています。そして貿易の場面でもそういった「環境にやさしい」製品 (ローインパクトな製品) とその基準作りが求められるようになりました。特にWTO・TBT協定では、WTO加盟国がルールの制定を行う場合はISO等の国際規格に基づくルール作りや運用を推奨しています。このように、ISO規格は貿易にとどまらず、ものづくり活動に対しても少なからず影響力を持っていることがわかります。このような背景があるなか、ISO 59000シリーズの開発が始まりました。

ISO 59000シリーズの概要

前述した通り、本シリーズはいくつかの規格によって構成されますが、本コラムではメインとなる以下の3つの規格についてその概要をご説明します。

  • ISO 59004(循環経済-用語、原則、実施のためのガイダンス)
    これは、循環経済に関する主要な用語の定義を提供し、循環経済の原則を定める規格として位置づけられています。
    本規格は7つの章から構成され、AからFまでの付属書(Annex)と用語解説が添付されています。

  • ISO 59010(循環経済-ビジネスモデルと価値ネットワークの移行に関するガイダンス)
    本規格では、組織がビジネスモデルやバリューネットワークを従来のリニア型からサーキュラーエコノミー型に移行するためのガイドラインを提供しています。
    ここでは、目標や対象範囲の設定方法や、循環経済を実現するプランの策定、ビジネスモデルの更新、バリューネットワークの再構築などが規定されています。

  • ISO 59020(循環経済―循環性能の測定と評価)
    本規格では、循環型経済の度合いを評価する方法を示しています。
    評価の対象範囲の決定から始まり、循環性を測る指標の選択、測定すべきデータの特定、データの収集、指標に基づくデータの算出、そして評価と報告までの手順が明示されています。
    この評価は地域や組織間のシステムだけでなく、単一の組織や製品など、さまざまなレベルで行われます。例えば本規格においては、部品の再利用や再生品の利用比率の計算方法などが規定されており、プロダクトライフサイクルの業界平均などを指標として明示することが求められています。加えて、電気利用における再生可能エネルギーの比率や水の再利用率などの可視化も要求されています。
    本規格は8章から構成され、AからHまでの付属書(Annex)があります。
    評価(Measuring/Assessing) の原理、原則、フレームワーク、境界(バウンダリー)の設定方法、循環性の測定やデータの取得、そしてレポートの作成方法などの要素からなる章立てとなっています。
    AからFまでの付属書(Annex)は核となる循環指標、重要なデータ、補完的な方法論、サーキュラーエコノミーとSDGsとの関連、無駄や損失についての定義や詳しい解説、データに関する定義や正確性、循環性を特定するデータ収集方法、計算や集計方法における留意点、飲料メーカーにおける参考例などで構成されています。

上記にご説明した3つの規格は、それぞれISO国際規格として2024年5月に発行されました。

さいごに

今後、再生品・再利用品や再生可能エネルギーの使用率を可視化し、市場や社会に公表することで
ステークホルダーとのコミュニケーションが今よりももっと円滑に、より公平に進むことが予想されます。
そのような状況においてISO 59000シリーズが役立つことは間違いないでしょう。
現在、若い世代を中心に環境配慮購買行動が高まっていますが、今後は温暖化対策の主要な取り組みの1つとして循環型経済の概念を採用することが見込まれています。この動きは、製品設計の最適化が行われ、結果として製品の寿命が延び、修理やメンテナンスといったサービスへのアクセスがより容易になる未来の訪れを予感させます。

ISO 59000シリーズを参照して、まずは「再生品利用率5%」「製品寿命を業界平均の2割アップ」 などの目標で自社製品のアップグレードを図ってみてはいかがでしょうか。

関連情報

今回ご紹介したISO 59000シリーズなどの認証取得や取得した認証・ラベルの効果的な使い方、脱炭素目標の設定、移行計画策定に関するご相談をお受けしております。下記よりご相談ください。

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執筆者情報(執筆時点)

isobesama2.png 磯部 洋(いそべ ひろし) 氏
 BSIグループジャパン株式会社
 Sustainability & Services, Business Development Manager


総合商社、マイクロソフト勤務を経て認証業界にてサステナビリティ関連の検証業務に従事。BSIジャパン入社後は、GHG排出量検証やカーボンニュートラルに関する国際認証サービス等の提案および関連セミナーでの講演を行っている。

参考文献

ISO ISO/TC 323 Circular economy https://www.iso.org/committee/7203984.html
Standards by ISO/TC 323 Circular economy
https://www.iso.org/committee/7203984/x/catalogue/p/1/u/1/w/0/d/0
European Council Council of the European Union
Circular economy: Council and Parliament strike provisional deal on the right to repair directive
https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2024/02/02/circular-economy-council-and-parliament-strike-provisional-deal-on-the-right-to-repair-directive/
ISO ISO 59004 Circular economy
-- Vocabulary, principles and guidance for implementation
https://www.iso.org/standard/80648.html?browse=tc
ISO ISO 59010 Circular economy -- Guidance on the transition of business models and value networks
https://www.iso.org/standard/80649.html?browse=tc
ISO ISO 59020 Circular economy
-- Measuring and assessing circularity performance
https://www.iso.org/standard/80650.html?browse=tc
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