第十三回 Scope3の削減に向けたサーキュラーな原材料調達戦略 | 企業のサステナビリティ経営・自治体の町づくりに役立つ情報が満載

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コラム

第十三回 Scope3の削減に向けたサーキュラーな原材料調達戦略トランジション・ストラテジー(移行戦略)のすすめ ~循環型ビジネスの実現~

おしアミサムネイル (4).pngサーキュラーエコノミーの推進上、調達の見直しは避けて通れません。コスト面、実現可能性面に障壁が多いサステナブル調達をどう進めるべきか解説します。

目次

本記事は「Scope3の削減へ「サーキュラー」視点の原材料調達戦略」のセミナー内容を基に作成しています。詳細はセミナー動画をご覧ください。

ボタン_動画と資料はこちら.png

既存事業を循環型にするには

サーキュラーエコノミーは、近年急速に企業の取り組みが進んでいる分野です。代表的な取り組みとして製品のリサイクルやリユース、製品寿命延長のための修理や再販売などがあります。背景として、今やサステナビリティに関する取り組みは、企業としての社会的責任を果たすためだけでなく、顧客が商品を購入する際の1つの判断軸となりつつあります。最近ではサーキュラーエコノミーの基準が国際規格「ISO 59000」として発効されるなど、この流れは今後急速に進んでいくものと考えられます。サーキュラーエコノミーへの1つの切り口として、再生可能な材料、または環境負荷の低い原材料である再生材(リサイクル材)などを「サステナブル調達」することで作られる、サーキュラーかつCO2排出量の少ない製品・サービスを設計することが期待されています。製品のバリューチェーン上で、特定の工程の環境負荷を低減するには限界があり、同等の価値を提供し続けながらも、既存ビジネスを循環型に移行させていくことが重要です。

▼循環型事業への移行に向けたバリューチェーン上のステップ

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(出典:アミタ作成)

しかし、再生材を活用しながらも製品の安全性や機能性を担保するには、バージン原料の使用を前提とした既存の基準や製造手法が障害となるケースが少なくありません。また、再生材は廃棄された商品が原料となっているため、材料の安定的な量や質、その調達ルートの確保も課題となります。そのため、再生材の原料調達に向けては調達方針の策定、サステナブルな製品開発、品質管理など複数の部門と縦横で連携して成し遂げる組織力が必要です。

サーキュラーエコノミーとは:https://www.amita-oshiete.jp/qa/entry/002240.php

▼循環型事業へのシフトに向けた部門ごとの取り組み

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(出典:アミタ作成)

原材料の見直しによるScope3の削減効果

環境に配慮した原材料調達はCO2削減にも効果的です。サプライチェーン排出量のScope3のカテゴリ1「購入した製品・サービス」とカテゴリ4「輸送、配送」の削減に貢献する取り組みに分類されます。カテゴリ1は原材料などの採掘・加工で、カテゴリ4は原材料を仕入れる際の物流が含まれます。どこでどのような原料を仕入れ自社の製品に使用するか、今後は機能性やデザイン性だけでなくCO2排出量にも配慮して選定をしていくことが求められます。Scope3の削減にあたってステークホルダーとの連携が増え、コミュニケーションが複雑になる可能性はありますが、サーキュラーエコノミーとカーボンニュートラルを同時に推進させる取り組みとしてサプライチェーン上の企業と協力し取り組みを進めることが重要です。

バージン材料から再生材料に切り替えることで、どれくらいのCO2排出量の削減効果があるのかは、具体的な素材や製造工程により異なるため一概には言えず、LCA(ライフサイクルアセスメント)やCFP(カーボンフットプリント)などの手法による算定が必要です。参考情報として、経産省資料によれば、例えば食品トレー(PS)のマテリアルリサイクル材料の場合、バージン材料に比較し、製造時のCO2排出量が83%削減。アルミ缶のリサイクルの場合は66%削減されると算定されています。

▼再生材に切り替えによるCo2削減量

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(出典:経済産業省

Scope3の算定方法についてはこちら
Scope3の分類とカテゴリ5についてはこちら
CDPについてはこちら

環境に配慮した調達を進めるステップ

サステナブルな調達を進める手順として以下の3つのステップがあります。

1. 調査対象の選定
サステナブル調達の検討を進めるにあたって、まずは製品のどの部品に再生材等を使用するかの検討、そしてその選定です。そもそも代替可能な部品なのか製品安全・品質基準と照らし合わせながら検討を進め、原料が市場で調達できるのか既存事例などから情報を集めていきます。情報収集後、再生材の調達目標数量や品質基準の整理、原材料の環境影響評価等を調査し、実際に調達を進めていく際の判断軸となる情報をまとめていきます。

2. 調達先・代替原材料候補の調査
調達する原材料が決まったら次に、調達先の調査です。「調達対象の選定」のステップでまとめた、素材の品質、コスト、入手できる量などの情報をもって調査を行います。再生材の供給量は、廃棄物の発生状況によっても左右されるため不安定になりがちです。製品を製造するのに十分な品質で、必要な量を確保できるのか、念入りに確認をする必要があります。また、このときに調達に係る法的リスクについても確認をしましょう。

3.実現可能性評価
サンプルを使用して必要な内外部コストの試算、必要な数量についての分析をする段階です。製品に再生材を使用したことで打ち出せる価値(CO2削減効果なども含む)と、機能性、コストなどを整理し、再生材を使用することに価値があるのか議論を行った上で、代替原材料として活用の可能性を総合的に判断する必要があるでしょう。
この時ぜひ考慮すべき点が2つあります。1つは、CO2削減効果などを算定し第三者評価を受けることまで含めたブランディングの可能性と、もう1つは、純粋な資源価値や機能・性能だけでなく、循環型だからこその「関係性」や「物語(ナラティブ)」といった付加価値にも注目することです。この2点を考慮できるかどうかで、単なる資源代替の取り組みで終わるのか、それを他社との差別化要因の1つにできるかが変わります。

再生材を活用した先進事例

自社の製品に再生材を活用した2つの事例を紹介します。どちらも素材の特性を活かし、独自性のある商品の設計となっています。

●(株)アシックス エアバック生地を再利用したシューズ
(株)アシックスでは豊田合成株式会社のエアバッグ生地を再利用したシューズを開発しています。使用された生地は自動車の搭載基準を満たすために試作されたもので、強度としなやかさを兼ね備えており、アッパーの主要部分に取り入れられています。また、シューズのデザインとして赤いステッチやナンバリングがあり、ベロ部分は膨らんだエアバッグをイメージされています。

▼エアバッグ記事を再利用したシューズ「GEL-SONOMA 15-50」

asics.jpg
(出典:(株)アシックス

●日本エムテクス(株) デニム端材を主原料とした建築内装用左官材
日本エムテクス(株)では国内のデニム工場から排出される端材を粉砕し、左官材を開発しています。また、接着剤を使用していないことから古くなったら水をかけ再度練り直すと、左官材として再度用可能となります。また、デニムの端材の色を活かした色味を活かしている点も特徴となっています。

▼デニム端材をアップサイクルした左官材「NURU DENIM(ヌルデニム)」


nurudenim.png (出典:日本エムテクス(株)

最後に

本記事では循環型のビジネスに移行するための「サステナブル調達」に関して解説しました。サプライチェーンを循環型に変えていくためには、サステナブルな原材料の調達、使用済品の回収、販売モデルの変革など全体包括的な循環型ビジネスへの移行検討が必要です。未利用資源や他社廃棄物を自社製品の原料として活用することは、調達コストやリスクの低減可能性に繋がるだけでなく、GHG排出原単位が下がりScope3削減にも寄与します。さらに、循環型資源の有する「物語」によって、企業独自のユニークな価値づくりができるため、製品のコンセプトに新たな価値を加えることができます。改めて自社の製品の環境負荷低減について見直しましょう。

関連情報
    • 「サーキュラー」な原材料やエネルギー(「サーキュラーマテリアル」)の調達をご支援する「サステナブル調達サービス」の詳細はこちら
お問い合わせ

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執筆、編集

梅木 菜々子(うめき ななこ)
アミタ株式会社
社会デザイングループ

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