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サプライチェーン排出量とは何ですか?

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サプライチェーン排出量とは、事業者の原料調達・製造・物流・販売・廃棄など一連の流れ全体(サプライチェーン)における組織活動に伴って発生する温室効果ガスの排出量のことを指します。Scope1(直接排出量)、Scope2(エネルギー起源間接排出量)、Scope3(その他間接排出量)から構成されています。
近年、世界ではCDP(旧:カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)をはじめ、企業が関連するサプライチェーン全体での温室効果ガス排出量としてScope3まで管理し、対外的に開示する動きが強まっています。

サプライチェーン排出量の概要

1998年に成立した地球温暖化対策の推進に関する法律により温室効果ガス排出量算定・報告・公表が義務付けられて以降、企業の自社の排出量の把握が定着しており、最近では「自社の排出」から「組織のサプライチェーン全体の排出」へ拡大する動きが加速しています。
組織のサプライチェーン全体の排出量を算定するためには、下記の図のようにScope1、2に加え、Scope3の排出量の把握も必要となります。
Scope3は、原材料の調達、物流や流通、製品の使用、廃棄、出張、通勤など企業活動の範囲外での排出を指しており、GHGプロトコルによって算定・報告の具体的な要求事項やガイダンスとして「Scope3基準」が2011年10月に策定されています。

Supply chain.png図:Scope1〜3の概念図(環境省HPより)

Scope3基準では、5カテゴリに分類されており、カテゴリ1~8の「原則として購入した製品やサービスに関する活動(調達先)」を上流、カテゴリ9~15の「原則として販売した製品やサービスに関する活動(販売先)」を下流と定義しています。
※詳しくは下記の関連記事に表が記載されていますので参照ください。

関連記事:Scope3(スコープ3)カテゴリ5の算定方法と企業事例、排出量削減の仕方まで解説 !

サプライチェーン排出量算定の目的と効果

サプライチェーン排出量算定は、事業者自らの排出量だけでなく事業活動にかかわる全ての排出量を算定することにより、企業活動全体を把握、管理することが目的です。また、以下のような効果も期待できます。

  • サプライチェーンにおいて排出量の多い部分や、削減ポテンシャルの大きい部分を明確にできる
  • サプライチェーンを構成する他の事業者や製品の使用者などへの働きかけにより、関係者間での理解の促進、事業者間で協力した削減を進めることができる
  • サプライチェーン排出量を可視化し公表することで、投資家、消費者、地域住民などステークホルダーに対する説明責任を果たし、企業価値を向上することができる
  • 自社のサプライチェーン排出量の経年変化を把握することで、環境経営指標として活用できる


サプライチェーン排出量の見える化に取り組む企業の事例

実際に、企業はサプライチェーン排出量算定をどのように活用しているのでしょうか。
本田技研工業株式会社の取り組みについて紹介します。

1. 算定を行う背景、目的

  • サプライチェーンを通じた取り組みとして、Honda環境宣言のもとライフサイクルアセスメントの取り組みを以前から進めていた
  • GHGプロトコルによってScope3基準が作成されたことにより、企業活動の環境負荷をカテゴリごとに分けてマッピングし、排出量削減ポテンシャルを見極めるツールとして算定を行うこととした

2. 算定のメリット、活用方法

  • LCAとは違い、Scope3では製品使用段階の排出量を使用年度ごとではなく販売年度ごとに算定するため、当該年度の開発・販売の取り組みをタイムリーに評価でき、また経年評価が可能になったことで、次の戦略が立てやすくなった
  • 取引先企業との協働では、CO2排出量などの環境データの共有、優れた環境負荷低減の取り組みを行う取引先企業の表彰など、コミュニケーションも兼ねた取り組みに活用している
  • 算定結果は社内で共有し、従業員に自らの業務がどのような環境負荷と結びつくかを認識させ、意識向上につなげるきっかけとしている

3. 事例のポイント

  • 自社の取り組みの見える化を従業員の環境意識の向上につなげる
  • 排出量の見える化を活用し、サプライチェーンとのコミュニケーションを深化させ、協同取り組みを加速させる

パリ協定において日本が設定した目標達成に向け、各業界でも排出削減の取り組みが求められていくであろうことや、近年企業の環境経営の指標、環境情報の開示について機関投資家や環境格付機関の注目が高まっていることから、気候変動や資源に関する戦略的な取り組みは、企業にとって不可避なものとなっています。企業価値向上の観点からも、今後サプライチェーン排出量の算定に取り組む企業は増加していくと考えられます。

お問い合わせ

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聞き手プロフィール

miyauchi-pro-1.png宮内 達朗 (みやうち たつろう)
アミタ株式会社

地上資源プラットフォームグループ
西日本カスタマーホスピタリティチーム 

香川県出身。立命館大学大学院社会学研究科を卒業後、アミタに合流。環境に関するテレマーケティングやセミナー企画・運営等の業務に携わる。現在は九州エリアにて廃棄物管理などを中心とした企業環境部に対する戦略支援業務に従事している。

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